箱根駅伝2021シューズ事情 〜昨年に次ぐナイキ独占〜
- 2021.01.06 Wednesday
- 17:20
2021/01/03更新
□ 2021年箱根駅伝はナイキ独占が続く
みなさん、こんにちは。シューズアドバイザー藤原です。
2021年の箱根駅伝は、まさかの、まさかの大逆転劇でしたね。わたしは、母校東海大学ではなくて、駒澤大学と優勝と予想していましたので、最後の最後で鼻高々です(笑)(ちなみに、高岡尚司くんのYouTube動画で予言していますので見て下さい)
URL
https://youtu.be/Tzc3AC1DIQs
しかし、シューズ事情は今年もかなりショッキングでした。
とにかく、ナイキの着用者が210名の全参加者中、201名、95.7%という2020年を凌ぐ圧倒的なシェアになり、黒船来航、まさにナイキに占領されたという感じです。ウォーミングアップで選手はデイリートレーナーのペガサスを履くなど、履き分けの習慣を定着させたことも、ナイキの成し遂げたことですね。
今年も区間賞はほぼ独占でしたが、一方でナイキの区間1〜3位での支配率は若干下がりました。他社シューズ着用者は9名しかいなかったにも関わらず、そのうち4名が区間1〜3位に入るという高確率でした。他社シューズを履いた選手は、見た目的にも、実力的にも目立ったということになりますね。
昨年は最終区でミズノにひと区間取られましたが、今年はニューバランスに7区で1区間区間賞を奪われ、そこは、何とかナイキ独占はなりませんでした。
□ ナント、アシックス着用者がゼロ
しかし、いずれにせよ、ほぼナイキ状態ですから、その影響もあり、2016年には61名、2017年には67名の着用者がいたアシックスは、今回はついに着用者ゼロ。金栗四三のハリマヤからバトンタッチして戦後、全盛を極めたアシックスのその独占的な人気の終焉と言えるでしょう。
ウエアスポンサーをしている山梨学院大学がかつてはオールアシックス着用者と“稼ぎ頭“でしたが、2021年では、逆にオールナイキとなっています。ニューイヤー駅伝でワールドアスレチックに申請済のプロトタイプを履く選手が数名いましたので、箱根駅伝でも履く選手がいると思いましたが・・・それもゼロでしたね。
アシックスやミズノと言えば、数年前までは、高校生からしっかり青田買いするやり方がハマっていました。その高校生が大学に進学してもそのまま着用するというパターンが圧倒的だったからです。昨年末行われた男女の全国高校駅伝では、まるで昨年の箱根駅伝を見ているよう・・高校生でもナイキ化が伸張しているのは明らか。
これからも明るい展望はありません。現在開発中のプロトタイプを履く選手の圧倒的な活躍に期待するしかない状況です。
□ ニューバランスは区間賞獲得
ニューバランスは、東京国際大学の7区佐選手が、“マイル用レーシングシューズ“ フューエルセル(FC)5280でナイキの区間賞独占を阻止しました。
本音としては、ニューバランスは、5280というフィートで1マイルの意味のその名が象徴的なレーシングフラットではなくて、実質的な対ヴェイパーフライシューズであるFC RCエリートを履いてもらいたかったでしょうけど、このシューズの着用者1名のみでした。
写真:NBフューエルセルRCエリート: NBオフィシャルページより
また、城西大学、拓殖大学といったウエアスポンサーの大学では着用者ゼロ。城西大学に至っては全員ナイキでした。
かなり、推していた早稲田大学 井川選手の心変わりも痛かったです。まあ、学生だからしょうがないですが、コミュニケーションをしっかりとっていた選手だけにショックだったでしょうね。(全日本大学駅伝よりアルファフライネクスト%を着用)
□ ミズノ本気の反発不発
ミズノは、5校のウエアをサポートしていますが、そのうち3校はナイキ100%。昨年同様4区で創価大学の嶋津選手が区間2位になりナントカ面目を保ちました。
しかし、ミズノも昨年発売したウエーブデュエルネオではなくて、箱根駅伝直前で発売したばかりのウエーブデュエルネオSPを履いてもらいたかったのではないでしょうかね。
写真:ミズノウエーブデュエルネオSP
しかも、着用者は1人はウエーブクルーズカスタム、2人はデュエルネオのプロトタイプのときのオールホワイトカラーというおまけ付き・・・なんとも喜べない感じではないでしょうか。
また、2020年に色々発売された他社の厚底レーシングの着用者はゼロ。ホカオネオネ、サッカニーあたりは1人ぐらいいるのかなと思っていましたがいませんでしたね。
□ アディダスはシェア2位も・・・
最大のライバルにして、永遠のライバル、アディダスはシェア2位でしたが、そうは言っても1.9%のシェアで厳しい状況であることは変わりありません。
青山学院大学は、昨年の“裏切り“以来、ナイキを全員で履くチーム戦略かと思いきや、今回9区 飯田選手がアディゼロプロを履いたことでその疑問は払拭されました。
写真:通常のソールは真っ黒
が、しかし、彼の履いているアディオスプロのアウトソール前足部を見ると、市販品と仕様が違って、同社のアディゼロセンのものを貼る、どうやらカスタム使用のようです。
このナイキフィーバーは、基本的には、市販品を履いて競いあうといった国際的な流れに沿ったもので、その市販品が9割の選手に受け入れられていることが大きなインパクトなわけです。
つまり、カスタムで自分好みにしてあげるようなことは、時代に逆行した行為、これは残念です。王者との差別化というより、むしろ以前と同じ日本だけの“ガラパゴス路線“、これは戦略としてもう避けるべきです。
また、ウエアサポートチームの明治大学は戦前の予想を大きく裏切っての11位。アディオスプロを履いたのは1人だけでした。
□ アルファフライとヴェイパーフライどっちか
ナイキ着用者の中で、分かれたのが、ハレの日のシューズを、アルファフライネクスト%にするか、ヴェイパーフライネクスト%するか、結局面白いことにそれはほぼ半々でした。
写真:エアズームアルファフライネクスト% ランニングウエアハウスより出典
数としては、ヴェイパー104人に対して、アルファ97人でしたが、区間1〜3位の30名のうちナイキが26名、そのうち6割強がアルファフライと、“結果“はアルファを履いた選手が出したようなデータになっています。
一方、創価大のアンカーや法政大の2区の選手のように、大きなブレーキもアルファフライ、ハマると好走につながって、ハマらないと大変なことになってしまうシューズとも言えるかもしれないですね。
特に山登りの5区には適性がないと思う。5区区間1〜3位はすべてヴェイパーフライ着用者。
5区で4名アルファフライを履いたが4人とも区間11位以下、2人は大ブレーキをした青山学院大学の竹石選手をも下回った。
反対に、下りは区間1、2位がアルファフライと特殊区間では特に明暗が分かれたと思う。
□ 来年の箱根駅伝はナイキ現象は少し落ち着く
2022年の箱根駅伝もナイキ現象は続くと思うが、例えば、ナイキウエアスポンサーチームでアディダスを履く選手が出てくるとか、そんな小さくも大きい動きは出てきて、少し落ち着きを見せるような気がしています。
というのも、シューズ自体で評価されていいレベルのブランドのシューズがあることもそう。
それは、2021年のニューイヤー駅伝ではすでにその傾向が見られていて、ハーフマラソン世界最高記録を打ち立てたアディオスプロは、九電工でほとんどのランナーで着用されていた。
しかし、返す返すもカラー、アルファフライのエキデンパックの黄色と、アディオスプロのソーラーカラーは画面越し、そんなに詳しくない消費者には酷似
アディオスプロもナイキだと思った人も少なくないと思う。
写真:アディオスプロ
優勝した富士通の塩尻選手は、デサントのゲンテン、ホンダの青木選手は、ミズノの12月24日に発売されたばかりのウエーブデュエルネオSPを履いて、いずれも好走した。
その他、スケッチャーズのレーザー3エリートハイパーや、ホカオネオネロケットXを履く選手も見らたり、実は実業団選手の方がそういった感度が高いことは間違いなく、箱根駅伝では1年遅れでそんな状況がやってくると思っている。
□ 箱根駅伝はプロかアマチュアか
ナイキ現象は、世界的なものではあるが、9割以上の選手がナイキ1社に偏る現象は、日本独特なものと言っていいでしょう。
日本人的群集心理に加えて、箱根駅伝という舞台が、やはり、遠くのスターアスリートより近くのライバルという、“カゴの中“のレースだということを再認識、その意味では学生のアマチュア側面が見られます。
しかし、オバケ級のテレビ放送高視聴率、全国的に注目度の高い誰もが知っているイベント、シューズスポンサーもこの日の露出次第では、商品の売上が変わってしまうという、というようなプロフェッショナルな側面も見え隠れしまう。
ですから、箱根駅伝は、ある時は学生のアマチュアレースで、ある時は誰も注目するプロ的なマネーが動くレースであり、二つの側面を同時に持つレースであることも大きな要素ではないでしょうか。
いやいや学生に好きなシューズを履かせてあげようよ
青山学院大学はアディダスを履くべきだ
と意見が分かれるのも無理はないです。
しかし、4年間陸上にその身を捧げて来た学生には箱根駅伝のようなハレの日は、そういうプロ的なスポンサー獲得の側面があるのも事実です。
就職が困難な時代にあって、実力があるならスポンサーを抱えてプロになる選手が至っていい、そう思います。
だから、わたしは、青山学院大学の選手はアディダスを履くべきという意見です。
だって、9割がナイキ着用という状況では、スポンサーの買い手市場。
学生としては突き抜けた成績をあげるか、名門実業団に在籍するとか、スポンサーの興味を惹き続けるためには、結局、激しい競争が待っていると思うんですよね。
来年2022年の箱根駅伝では、本番で目立ってやろうと、誰も履いていないシューズを履いて好成績を出す選手が現れることを期待したいですね。
ちなみに、実業団という職業アスリートが皆無のアメリカでは、学生は4年生までにはスポンサーを惹きつけ、プロ選手として活動するのが一般的です。
アメリカの東京オリンピックマラソン代表を決める全米オリンピックトライアルでは、もちろんナイキがシェアがいちばんでしたが、2位のブルックスは、10.5%のシェアだったことが、それを物語っています。
ここでのデータなど、2021年箱根駅伝のシューズ事情は、こちらに表にしてありますので確認してください
シューズから見た2021年箱根駅伝(速報)
https://media.alpen-group.jp/media/detail/running_210103_01.html
シューズから見た2021年箱根駅伝(総括: 1月4日公開)
https://media.alpen-group.jp/media/detail/running_210104_01.html
JUGEMテーマ:ジョギング